男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第2部) 育毛剤と遺伝子

育毛剤の長期的効果
育毛剤はやめられない 

紫色の線の方々(パープル・ライン)

育毛剤の使用を3~4ヶ月間以上中止すると、薬の効果は失われます。髪は患者の年齢に応じて、もともと遺伝的にプログラムされた、本来の細い髪質に変わります。

それまで長年の間、育毛薬を使い続けてきたとしても、薬の効果は消えてしまいます。
育毛剤を中止した後の3?4ヶ月間に、びっくりするほど抜け毛の量が増え、その後は薄毛に苦しむ事になるでしょう。
頭髪の濃さは、比較的短期間に失われて、遺伝子で運命づけられた、年齢相応の、本来の、細い髪質の薄毛に変わります。
薄毛の遺伝子は変わっていないからです。

患者さんたちは、たいていの場合、パニックに陥ります。

幸いにも、育毛剤の使用をすぐに再開すれば、髪の濃さは約6ヶ月後に、もとに戻ります。ただし、髪の密度を取り戻すためには、髪が薄毛になるときよりも、長い時間がかかります。
結局のところ、髪の濃さは約6ヶ月後には、以前のレベルに戻るでしょう。(紫色の線)

育毛剤の効果が切れるときは、太い髪が根元から抜けるので、短期間に薄毛が進行したように感じます。

育毛剤の再開により、髪が濃くなる際は、髪の根元が太くなってきても、毛髪の先は細いままなので、太い部分がある程度長く伸びて、外見上の髪の濃さが戻るまで待つ必要があります。髪の濃さとボリュームが回復するまで時間が長くかかるのは、こういう理由です。

たとえば、お仕事の出張などで、2~3週間、育毛剤を忘れても、帰ってから再開すれば、問題ありません。
まとめて3~4ケ月以上、薬を中止しなければ、大丈夫です。

しかし、育毛剤の再開が遅れて、休薬期間が長くなると、髪は以前の濃さまで回復しないでしょう。

育毛薬は、使っている間のみ、効果があります。
つまり、育毛薬の使用は、生涯、やめることができないのです。

育毛剤で髪が濃くなっていても、遺伝子は変わっていません。育毛剤の効果が切れると、遺伝的にプログラムされた薄毛の状態に変わります。

また、育毛剤を続けていても、年齢とともに、髪が若干細くなることは、誰にも止められません。私たちにできることは、頭髪の薄毛の自然の進行を、遅らせることだけです。
それが、育毛薬の効果なのです。

現状の髪の濃さを維持することは、育毛治療の最も重要な目標と言えます。

頭髪の濃さに関連している可能性のある遺伝子と体質

毛髪の太さに影響を与える可能性がある、いくつかの遺伝子が、検出されています。それらには、SRD5A2、SULT1A1とPTGES2が含まれています。

SRD5A2は、ヒトの5α還元酵素II型をコードする遺伝子です。
5α-還元酵素II型の活性が高いと、DHT濃度が高くなり、AGAの進行につながります。

SULT1A1遺伝子は、ミノキシジルを、その活性型である硫酸ミノキシジルに変換する、硫酸転移酵素の、酵素活性に関連しています。
硫酸ミノキシジルの濃度が増加すると、その結果、髪の濃さと密度が増加します。

硫酸転移酵素の酵素活性が非常に低いか、あるいは、ほとんどない場合、ミノキシジルによる薄毛治療の効果は、ほとんど見られません。
そのような方々の率は、人口の約20%です。

PTGES2遺伝子は、PTGES2酵素の活性に関係しています。線維芽細胞はPGE2を産生し、これは髪を濃くします。
PTGES2遺伝子は、PGE2の合成をコードしていて、髪の成長を促進します。

遺伝子解析
SRD5A2、SULT1A1およびPTGES2遺伝子

SRD5A2、SULT1A1、およびPTGES2遺伝子を解析すれば、5α-還元酵素の阻害剤やミノキシジルを用いた薄毛治療に関する、治療効果の個人差や、遺伝的素因に関する情報を、治療開始の前に、得ることができるようになるでしょう。

これらの遺伝子の解析結果により、皆さんが、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルに対する、レスポンダーかノン・レスポンダーかを、前もって、知ることができるかもしれません。

そうすれば、実際に薄毛治療を始める前に、患者さん一人ひとりに対して、最も効果のある育毛剤を、あらかじめ選べるようになるでしょう。

遺伝子解析によって、個人別の薄毛治療が、近い将来、可能になるかもしれません。

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