男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第2部) 育毛剤と遺伝子

5α-還元酵素の阻害剤
フィナステリドとデュタステリド

フィナステリドとデュタステリドは、5α-還元酵素を抑制するといっても、完全にブロックする訳ではありません。
頭皮の組織内のDHTに関しては、フィナステリドとデュタステリドは、AGAまたは前立腺癌の男性患者で、それぞれ頭皮組織のDHT濃度を、60?70%および90?97%低下させたことが、文献で報告されています。

血清中のDHT濃度に関しては、フィナステリドとデュタステリドは、どちらも、AGAの男性で、血清中DHT濃度を、約50?60%低下させました(著者の未発表の個人的データ)。

しかし、血清中のDHTを低下させる作用に関しては、薬の違いによって、その効果の程度に、個人差があります。

さらに、後発の医薬品は、先発の医薬品と比べて、まったく同じ効果がある訳ではありません。

例えば、先発品のフィナステリドは、ある患者では、後発品のフィナステリドよりも、血清DHT濃度を、より低下させました。
しかし、著者の個人的な経験によれば、後発品のフィナステリドのほうが、先発品のフィナステリドよりも、血清DHT濃度を、さらに低下させる症例もありました。

デュタステリドは、症例によっては、フィナステリドよりも、血清DHTを、より良好に減少させました。
しかし、他の症例では、デュタステリドで血清DHTが低下せず、フィナステリドのほうが、デュタステリドよりも、血清DHTを、より良好に減少させる場合もありました(著者の未発表データ)。

薬で血清DHT濃度を低下させる効果に個人差があることは、それぞれの患者さんの、遺伝子に違いがあることが、その理由である可能性があります。

個々の患者さん毎に、遺伝子変異の違いを解析すれば、それぞれの5α-還元酵素阻害剤の有効性に関して、症例ごとに個人差があることの、理由が分かる可能性があります。

SRD5A1とSRD5A2遺伝子
フィナステリドとデュタステリド

フィナステリドは、II型の5α-還元酵素を阻害します。デュタステリドは、I型とII型の5α-還元酵素を阻害します。

ステロイド5?α還元酵素(SRD5A)遺伝子は、5α還元酵素I型とII型のアイソザイムの活性に関連しています。

SRD5A1は、ヒトの5α還元酵素のI型アイソザイムをコードする遺伝子です。
他方、II型の5α還元酵素のアイソザイムは、SRD5A2遺伝子によってコードされています。
ステロイド5α還元酵素には3つの型があり、これらはそのうちの2つです。

SRD5A1遺伝子のC対立遺伝子は、人口の約40%の人々が保有しており、それらの人々では、5α還元酵素のI型の活性が高く、DHT濃度も高いことが、報告されています。

SRD5A2遺伝子

ステロイド5-α還元酵素の2型(SRD5A2)は、前立腺や髪の毛包で、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変えます。

SRD5A2遺伝子の一塩基多型(SNP)は、頭髪の毛包での、DHT濃度に影響する可能性があります。

SRD5A2遺伝子のG対立遺伝子は、人口の約30%の人々が保有していて、これは、5-α還元酵素の、最も活性の高い型に関連していました。

一方で、C対立遺伝子があると、5-α還元酵素の活性が、低下していました。

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