男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第2部) 育毛剤と遺伝子

男性ホルモンに対する毛包細胞の反応の違いは、頭皮の真皮組織の起源の違いが、原因だろうと考えられている 

頭髪は、頭皮の全領域で、同じ髪のように見えます。しかし、実は、頭皮には、2種類の違う毛包の髪が、はっきり領域が分かれて、生えているのです。

前頭部、中頭部から頭頂部までの範囲の真皮は、妊娠初期の、胚の、神経堤から作られた組織です。 
これらの範囲は、脱毛領域です。その領域の毛包は、AGAで、男性ホルモンに影響されて、薄毛になる種類の髪です。

それに対して、後頭部から側頭部の範囲の真皮は、胚の、中胚葉から作られた組織です。
これらの範囲は、非脱毛領域です。この領域の毛包は、男性ホルモンにさらされても、薄毛になりにくい種類の髪です。

男性型脱毛症(AGA)の患者で、男性ホルモンの影響によって、薄毛になる髪と、薄毛にならない髪が、分かれて生えていることの理由は、組織の元であった、胚の起源が違うからであろうと、考えられています。

男性型脱毛症(AGA)の基礎的研究 (第2部) 
AGAの薬物治療;要約

本章では、ミノキシジルや、5α-還元酵素の阻害剤を用いた、男性型脱毛症の薬物治療に関する、基礎的科学と、遺伝子解析の、最新情報について解説しました。

ミノキシジルは、毛包の酵素によって、活性型の硫酸ミノキシジルに変換されて、育毛効果を発揮します。この酵素の活性の差により、ミノキシジルの育毛効果に、個人差がみられます。

ミノキシジルは、成長期誘導剤です。短縮した成長期を、長くする結果、髪を濃くします。

ミノキシジルの作用機序は、男性ホルモンと関係しないので、男性型脱毛症のほかに、びまん性の脱毛症や、限局性の脱毛症などの、非瘢痕性の脱毛症の治療一般に、効果が期待できます。

フィナステリドとデュタステリドは、5α-還元酵素の阻害剤で、テストステロンからDHTへの変換を減少させます。
活性型の男性ホルモンであるDHTを減少させることで、毛髪が細くなる細毛化を防ぎます。

フィナステリドとデュタステリドは、男性ホルモンによって引き起こされる、AGAなどの脱毛症の治療に効果があります。

フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルはAGA治療に重要な薬です。
これらの薬の組み合わせを選び、容量を調節することは、患者さん一人ひとりに合った、最も効果的なAGA治療を選ぶために重要です。

5α-還元酵素の阻害剤や、ミノキシジルを用いた、薄毛治療の、治療効果の個人差は、遺伝的素因による可能性が分かってきています。
遺伝子の解析結果により、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルを用いた薄毛の治療に対して、レスポンダーか、ノン・レスポンダーかの情報を、症例ごとに知ることができるかもしれません。

将来、遺伝子解析により、患者さん一人ひとりに、最も効果のある育毛剤を選べるようになれば、個人別にオーダーメイドの薄毛治療が可能になるかもしれません。

男性型脱毛症、基礎的研究
参考文献

エリーゼA.・オルセン:髪の成長の障害。診断と治療、第2版。マグロウヒル、メディカル出版、ニューヨーク。2003年。

ジェリー・シャピロ:脱毛症の診断と治療の原則。第1版。マーチン・ドゥニツ、ロンドン。2002年。

著作権について

当サイトに存在する、文章・図やグラフ・画像等の著作権は著者に帰属します。著作物の情報を、著者の許可なく無断転載することを禁止します。引用の範囲を超えるものについては、法的処置を行います。転載する際はご連絡をお願いします。

毛髪関連 所属学会
その他 所属学会