頭髪の密度に関連している可能性のある遺伝子と体質
毛髪の太さに影響を与える可能性のある遺伝子が、200個以上、同定されています。それらのうちの、主なものに、SRD5A2、SULT1A1とPTGES2があります。
SRD5A2は、ヒトの5α還元酵素II型をコードする遺伝子です。
5α-還元酵素II型の活性が高いと、DHT濃度が高くなるので、頭髪の密度が低下して、AGAの進行につながります。
SULT1A1遺伝子は、ミノキシジルを、その活性型である、硫酸ミノキシジルに変換する、硫酸転移酵素の、酵素活性に関連しています。硫酸ミノキシジルの濃度が増加すると、その結果、髪の密度が増加します。
硫酸転移酵素の酵素活性が非常に低いか、あるいは、ほとんどない場合、ミノキシジルによる薄毛治療の効果は、ほとんど見られません。そのような方々の率は、人口の約20%です。
PTGES2遺伝子は、PTGES2酵素の活性に関係しています。線維芽細胞はPGE2を産生し、これは髪の密度を増加します。
PTGES2遺伝子は、PGE2の合成をコードしていて、髪の成長を促進します。
遺伝子解析
SRD5A2、SULT1A1およびPTGES2遺伝子
SRD5A2、SULT1A1および、PTGES2遺伝子を解析すれば、5α-還元酵素の阻害剤やミノキシジルを用いた薄毛治療に関する、治療効果の個人差や、遺伝的素因に関する情報を、治療開始の前に、得ることができるようになるでしょう。
これらの遺伝子の解析結果により、皆さんが、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルに対するレスポンダーか、ノン・レスポンダーかを、前もって、知ることができるかもしれません。
そうすれば、実際に薄毛治療を始める前に、患者さん一人ひとりに対して、最も効果のある育毛剤を、あらかじめ、選べるようになるでしょう。
遺伝子解析によって、個人別の薄毛治療が、近い将来、可能になるかもしれません。
男性型脱毛症、基礎的研究 (第3部)
遺伝子解析:要旨
AGAの遺伝子研究に関する最新情報について、この章で説明しました。
遺伝子変異の個体差を解析することで、各薬剤に対する応答性や治療による脱毛の改善の可能性を、予測できる可能性があります。
遺伝子解析は、脱毛に苦しむ各患者が、脱毛治療の開始前に、有効な薬を選択するのに、役立つかもしれません。
AGAのメカニズムを理解することで、男性と女性におけるアンドロゲン性脱毛症の、治療と予防の可能性に関する、重要な情報が得られるでしょう。
近い将来、患者ごとにカスタマイズされた、効果的な脱毛症の治療が、遺伝子解析によって、可能になるかもしれません。